毛球症

【症状】
 元気そうなのに食欲不振がつづいたり、吐き気や便秘がちになると…


illustration:奈路道程

 

 猫はデリケートな生き物で、日によって食欲があったり、なかったりすることも少なくない。愛猫が、わりと元気そうなのに何日間か食べなかったり、吐き気があったり、あまり排便せず、気になって動物病院を訪れ、獣医師に触診や聴診、血液検査、尿や便検査などで健康状態をチェックしてもらっても、何の“異常”も発見できないことがある。そんなとき、疑ってみたい「病気」のひとつが「毛球症」で
ある。
 「毛球症」とは、胃や腸など消化器官内に毛玉ができる症状だ。万一、毛球症なのに、検査ではっきりとした異常がないからと、様子を見ているだけだと、胃や腸内に形成された毛玉(腸内では縄状になる)がどんどん成長。胃や腸の働きが悪くなり、猫はさらに食欲をなくし、ガリガリにやせていく可能性もある。
 「おかしい」とレントゲン撮影しても、胃や腸内の毛の固まりは写らず、首をひねるばかり。胃の中で大きくなった毛玉は、上(食道)へも下(腸管)へも出ることができなくなる。腸管内で縄状にからみ、伸びた毛玉も身動きがとれなくなる(ときには、長さ四十センチに達するものもある)。そうなれば、開腹手術で毛玉を取り出すしか方法はない。
 不幸なことに、毛球症で衰弱死するケースもなくはない。「毛玉をあなどることなかれ」である。

【原因とメカニズム】
 毛づくろいで口中に入った抜け毛が胃や腸の中で毛玉になる
   猫たちは、たえず自らグルーミングして、からだを清潔に保っている。毛づくろいは猫の健康保持の秘訣である。それと同時に、精神的な不安や不快感などを感じたとき、「毛づくろい」をおこなって気分を落ち着かせるのも、猫の特質のひとつ(転位行動)だ。猫は、居眠りの前後、食後、運動後など、事あるごとに毛づくろいに熱中する。
 ザラザラした舌で毛をなめれば、毛が舌について飲み込み、胃や腸に抜け毛がたまりやすくなる。とくに長毛種の猫や、毛づくろいをくり返す猫たちは毛球症になりやすいが、毛のない猫以外、どの猫も可能性がある。
 もちろん、猫も、いわゆる猫草を食べて胃を刺激し、毛玉を吐き出そうとしたりする。しかし自分でうまく吐き出せないと、体内にたまっていく。また、ふだん、植物繊維をあまり食べない猫が、ウンチとともに毛玉を排泄するのも簡単ではない。近年は、人と暮らす猫たちも室内暮らしが一般化し、野外で自由に草を食べる機会も少なく
なった。飼い主が留守がちなら、家の中で退屈なゴロ寝生活をくり返すことになる。そうなれば、気分転換に毛づくろいをする回数も増えるだろう。また、運動不足が日常化して、胃腸の働きも落ちてくる。毛球症になりやすい要因が増加してきたのである。

【治療】
 軽ければ、毛球除去剤をなめさせる。
 ひどければ、胃腸の切開手術も
   はじめに述べたように、通常の検査では、猫が毛球症になっているかどうかを的確に診断することは意外にむずかしい。食欲不振なら、毛球除去剤を猫の口元に塗り、ペロペロなめさせて、毛玉をできるだけ体外に排泄させるようにする。食欲があったり、なかったりの程度なら、週に1、2度、自宅で飼い主さんが、愛猫の口元にさり気なく塗ってあげればいい。
 食欲不振が何日もつづいているのなら、毎日、たくさんの毛球除去剤を塗って、早く胃腸のそうじをしてあげることが大切だ。そのとき、排泄されたウンチをチェックして、毛玉がたっぷり含まれていれば、毛球症と見なすことができる。排泄されれば、自然、食欲も回復してくるにちがいない。
 なお、自宅で毛球除去剤を使う場合、注意すべきことがある。猫の気持ちを考えず、無理やり愛猫を押さえつけて、口元に塗りつけたりしないこと。嫌な思いを味わった猫は、毛球除去剤の臭いをかぐだけで拒否反応を起こしかねないからである。
 もし、毛球除去剤を大量になめさせても効果がないのなら、胃や腸を切開して、直接、毛玉を取り出さないといけなくなる。
 とにかく、大切なのは、「予防」である。

【予防】
 こまめなブラッシングや、植物繊維の多い食生活で毛球症を予防
   予防の基本は、日ごろから、愛猫のブラッシングを欠かさないこと。飼い主がこまめに愛猫のムダ毛、抜け毛を取り除いてあげれば、それだけ、愛猫が飲みこむ毛の量も少なくなる。また、日ごろから愛猫とのスキンシップを深め、また、おもちゃなどで遊んだり、室内で追いかけっこをしたりして、心身をリフレッシュさせること。そうすれば、「転位行動」で毛づくろいする回数も減るだろうし、胃腸の働きも活発化するだろう。
 それと同時に、食生活管理もきわめて重要だ。いわゆる猫草を食べさせるのもいいが、これは猫の嗜好によるため、好き嫌いもある。最も確実なのは、植物繊維がたくさん含まれている「ヘアボールケア」機能の高いフードを食べさせること。そうすれば、ふだんから胃腸のそうじがよくでき、体内の毛玉を体外に排泄させやすくなる。


愛猫のお腹に毛玉をためないために
 ヘアボールケアのフード

  頻繁に毛づくろいしていませんか?
毛玉がたまりやすい長毛種では? 
猫草は食べていますか?
   毛づくろいが原因で猫の体内にたまるヘアボールは、通常、吐いて排出するしかない。しかし、うまく吐き出すことができないこともあり、また、愛猫が毛玉を吐く姿は苦しそう。もし毎日の食事で自然に排泄できるなら、愛猫にとっても飼い主さんにとっても、これほど負担がかからず、安心なことはない。
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*この記事は、2003年1月20日発行のものです。

監修/麻布大学獣医学部 助教授 信田 卓男
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