オシッコ問題 清潔好きのネコが、室内のあちこちにオシッコをしだせば、 その背後にネコを取り巻くいろいろな問題がひそんでいる。 ネコの身になって、「問題解決」に取り組むこと が大切だ。 |
「トイレの汚れ」とオシッコ |
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子ネコのときから、オシッコがしたいと、一目散に自分のトイレにかけこんで用をすまし、そのあと、何度も臭いをかぎながら、前足でていねいに砂かけをする。ネコほど清潔好きでトイレットトレーニングのしやすい動物は少ないにちがいない。 そんなネコたちが、なぜか、リビングのカーペットの上やソファの後ろ、廊下やダイニング、台所のすみ、はては窓にかかるカーテンや寝室のふとんや毛布にまでオシッコをかける場合も少なくない。飼い主は、信頼を裏切られた思いで、つい、かわいいはずのネコをきつくしかる。そうすると、その反動で、室内のオシッコかけがさらに激しくなったり、あるいは逆に、ほとんどオシッコをしなくなったりするネコもいる。 ネコは、心もからだも、とてもデリケートな生き物だ。ネコがトイレ以外でオシッコをする要因を見きわめずに、しかってばかりいれば、ストレスが高まり、心身ともに重い病気になりかねない。なぜ、ネコがあちこちにオシッコをするのかをじっくりと考えてみることが、オシッコ問題解決の最善の方法である。 まず、比較的気づきやすい「トイレの汚れ」はどうだろう。清潔好きのネコにとって、悪臭のただようトイレほど厄介なものはない。なるべく汚れの少ないスポットをさがそうとするが、オシッコで砂が湿っていたり、ウンチが砂のあいだからはみ出ていたりすれば、トイレ箱を避けざるをえなくなる。 |
飼い主のトイレ管理 |
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飼い主たるもの、ネコのトイレは、できるだけ、いつもきれいに保つ努力をしていただきたい。もっとも、臭いが気になるからと、トイレに消臭剤や香水をふりかけたり、屋根やとびらつきのトイレを置く家庭もあるが、そのような飼い主側の「消臭対策」は、残念ながら、ネコがますますトイレを嫌がる結果になりがちだ。なかには、ネコのトイレの代わりに、犬用のペーパーシートを使っている家庭もあるが、ネコは、家畜化以前、砂漠地帯で砂状の土で排泄してきた。プラスチックや木製、紙製などの代用砂ならいいが、砂かきもできず、平らなペーパーシートを使うのは避けていただきたい。 また、多頭飼いの場合、ネコの頭数よりトイレの数が少なければ、トイレの汚れもひどくなり、ネコ同士の相性や力関係から、弱いネコ、神経質なネコがトイレの使用を断念するケースも少なくない。多頭飼いなら、トイレの数は最低、頭数分。できれば余分にもうひとつ。それも、適当に分散させて、用足しをするネコたちがかち合わない工夫が必要だ。 一頭飼いでも多頭飼いでも、ネコが自分のトイレを嫌がるようになれば、どうなるか。あらためて考えるまでもなく、廊下や洗面所、リビングのすみで「用」をすますことになる。神経質なネコなら、オシッコをがまんする。そうなれば、膀胱炎など、泌尿器関係の病気になりかねない。 ついでにいえば、膀胱炎になれば、膀胱内の炎症のために、尿意がひんぱんにおきて、ネコは、たいして膀胱に尿がたまっていなくても無性にオシッコをしたくなり、トイレに行く間もなく、あちこちで用足しせざるをえなくなることも多い。さらに慢性膀胱炎となれば、その傾向が増すばかりか、炎症がひどくて排尿困難に陥ることも少なくない。ネコのオシッコになんらかの異変があれば、とにかく、動物病院に相談していただきたい。 |
「尿マーキング」の問題 |
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ネコのオシッコには、生理的な要求以外の意味もある。いわゆる尿マーキングといわれるものである。 ネコは、よく知られるように、なわばりを守って生きる動物である。そのなわばり宣言のひとつが尿マーキングであり、ネコにとってごく自然な行為である。 もっとも、室内飼いで、生涯、安全な自宅だけをなわばりにするネコは、ふつう、それほどなわばり宣言をする必要はない。でも、引越し後で、その家になじみがなかったり、庭先に野良ネコが出没したり、飼い主が忙しくてあまり遊んでくれなかったりすれば、みずからの不安感をしずめ、自分の安心領域を確保するために、室内のあちこちに尿マーキングしてまわることも少なくない(この場合、いかにトイレが清潔であっても関係ない)。 そんなネコの不安な気持ちを理解せず、しかってばかりいれば、ネコはますます不安感をつのらせて、尿マーキングがひどくなる。 改善のポイントは、いかにネコの不安感をとり除くかである。そのためには、なにが要因かを見きわめることが不可欠だ。いずれにせよ、決して追いまわしたり、しかったりせず、少しでも安心感を高める努力をしてあげていただきたい。 そのほか、発情期になると、雄ネコばかりでなく、雌ネコも、異性にアピールするために、尿マーキングするケースもある。これもごく自然なネコの行為だが、室内飼い全盛のこの頃は、どうしても、人にとっての迷惑行為、問題行動になりかねない。発情期の問題なら、避妊・去勢が有効だ。 とにかく、野生時代、北アフリカの砂漠地帯を出身地とするネコは、わずかの水分で生きることができるため、飲む水の量も、オシッコの量や回数も犬にくらべて少ない。また、外敵への警戒のため、あるいは衛生上の理由で、なわばり内でのオシッコのあとは、ていねいに砂をかけ、臭いや痕跡を消すことは知られている。ネコはそれほど、オシッコに神経質な生き物なのである。今後、人とネコが室内空間で共存するためには、そんなネコたちの排泄習慣について、もっと理解を深める必要があるだろう。 |
*この記事は、2002年1月15日発行のものです。 | |
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