股関節形成不全2 |
【症状】 横座りをしたり、腰を振って歩いたり、歩き方、座り方がおかしい。 立ち上がるのに時間がかかる |
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![]() illustration:奈路道程 |
ゴールデン・レトリバーやラブラドール・レトリバーなど大型犬の子犬と毎日、楽しく暮らしていて、愛すべき子犬の歩き方、座り方が気にかかるようなら、できるだけ早く動物病院へ行き、くわしく検査してもらったほうがいい。 たとえば、オスワリのとき、横座りやあぐらをかくような、締まりのない座り方をする。立ち上がるのに時間がかかる。歩くとき、腰を左右に振りながら進んだり、後ろ足のどちらかを浮かすように歩く。そんなとき、「股関節形成不全」の可能性が少なくない。 早ければ、生後3カ月ぐらいから、そのような股関節の”異常“がめだってくる。放置しておけば、子犬の成長とともにだんだん股関節の変形も進行し、立ったり、歩いたり、座ったりするのが、とても苦痛になってくる。 犬や猫たちは、上体(頭部と胴部)を前後4本の足で支えながら歩き、走るが、股関節は、胴部の基盤となる腰部と後ろ足を結びつけ、体重の四割を支えながら力強く前進跳躍するために、後ろ足の自由な動きを可能にする重要な役割を果たしている。 なお、健康な股関節はほぼ球形の大腿骨頭と、これを被って収める寛骨臼よりなる球状関節で、3次元の広い可動域をもち、大きな荷重に耐えるようにできている。骨盤は、腸骨と座骨と恥骨と、その3つが寄り合う中心の寛骨臼骨の4つでできている。子犬の成長の過程で、その寛骨臼「カップ」と「骨頭」の形成のしかた、はまり方に問題が生ずるのが「股関節形成不全」である。 |
【原因とメカニズム】 遺伝的因子と食事内容などで、「骨」と「筋肉」の成長バランスがくずれると… |
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股関節形成不全は、シェパードで多く見られ、獣医学界で注目されるようになった。その後、シェパードの飼育頭数が減り、ラブラドールやゴールデンなど大型犬の飼育頭数が急増するにつれて、それら犬種の代表的な病気として知られるようになった。 なぜ、この病気になるのか。はっきりとした原因は不明だが、これまでの研究で遺伝性疾患であることが認められている。両親がこの病気を患っている場合、その間に生まれた子犬のほとんどが発症する。しかし、「遺伝」だけがすべてではない。同じ両親から生まれた兄弟でも、成長期の食事内容や運動のしかたによって、発症の有無が分かれる場合もある。 股関節などの関節は、骨と筋肉が微妙なバランスを保ちながら成長する。ことに大型犬の場合、成長期の成長の度合いがすさまじく、骨と筋肉の成長バランスがくずれて骨の成長スピードに筋肉の成長が追いつかなくなると、股関節に「ゆるみ」が生じてくる。 股関節がゆるむと、骨頭の動きでカップの縁が徐々に破壊され、カップはお皿のように浅くなる。変形関節炎である。そうなれば、「カップ」に対応する「骨頭」の外形も球形から、お皿を伏せたような形になっていき、変形した「骨頭」の「角」が「カップ」の内面を傷つけ、関節炎と変形はさらに進行していく。大型犬で体重が重い分、股関節への負荷も大きく、変形がひどくなり、痛みも増大し、ますます動きが悪くなるのである。 |
【治療】 月(年)齢や症状に合わせた整形外科治療と内科治療 |
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「股関節形成不全」の予防的外科治療には、症状の程度や発症月(年)齢などにより、幾種類かの整形外科的な方法がある。たとえば、生後5カ月未満の時期に関節のゆるみが確認された子犬の場合、骨盤を形成する「恥骨縫合」を電気メスなどで凝固固定して、腹側の成長をとめてカップの背側縁を外側に傾かせて、骨頭を被いやすくする。 生後4〜5カ月以上1年未満の子犬の股関節にゆるみがあり、「骨頭」のはまり方が浅く変形がほとんどない場合、骨盤を形成する「腸骨」と「恥骨」と「坐骨」をそれぞれ切断し、「カップ」の傾きを調節して接合。「骨頭」がうまくはまるようにする「三点骨切術」が広くおこなわれている。痛みが内科治療法で解消できないときは、比較的簡便な手術方法として、「カップ」に「骨頭」が当たらないように、「骨頭」部を切除し、「カップ」と「骨頭」の切除部とが接触しないように整形する「骨頭切除術」がある。 近年では、股関節の「カップ」の代わりにポリエチレン製の「カップ」を挿入し、大腿骨の「骨頭」を切除して金属性(チタン)の「骨頭」を装着する「人工関節」手術をおこなう事例も増えてきた。この股関節全置換手術には、現在、セメント法とセメントレス法がある。 このような外科治療以外に、内科的な治療法もある。「股関節形成不全」があっても、犬がほとんど苦痛を感じず、日常生活にそれほど障害がないのなら、手術する必要もあまりない。問題は、犬の感じる「痛み」をいかに減らすか、である。そのために、傷んだ軟骨を修復保護する、軟骨保護物質(グルコサミンやコンドロイチン硫酸)を含む健康食品が人用、動物用にいろいろ販売されているので与えるとよい。これらは副作用がほとんどなく、ずっと与えても心配はない。これらを与えていても痛みが出てきたときには、鎮痛消炎剤を投与して「痛み」を抑えたりする。もし、関節の変形や痛みがひどく、歩くのをつらがり、筋肉が萎縮してくるような場合には、骨頭切除術や人工関節手術をほどこすことになる。 |
【予防】 子犬期の食事管理と運動管理を大切に |
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遺伝疾患と見られる「股関節形成不全」は、「繁殖」の問題が病気蔓延の主要因となっており、現在、ラブラドールやゴールデンなどのレトリバー種の犬たちの45%以上が、この病気のおそれがあるといわれている(それ以外の大型犬にも、少なくない)。そのため、予防の基本は、病気の遺伝的素因をもたない子犬をいかに選び、育てるか、である。 子犬期の食事や運動内容の問題も発症の要因となるため、カルシウムなどのミネラルやタンパク質を過度に含んだ食べ物を与えず、子犬の成長段階に合わせた良質なフードだけにすべきである。また、骨格形成途上の成長期には、フリスビーやアジリティといった、急回転やジャンプなど股関節に負担のかかる運動は避けたほうがいい。といっても、筋肉の適度な発達が不可欠なので、無理のない範囲で、散歩や運動をおこなうことが大切である。 ※アジリティ:人の指示どおりに走る、犬の障害物競技 |
*この記事は、2003年01月20日発行のものです。 | |
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