暗い場所で見えにくい 徐々に目が見えなくなる「進行性網膜萎縮」
暗くなると愛犬の歩き方がぎこちない。そんな時は「進行性網膜萎縮」の可能性も疑ってほしい。 遺伝性の疾患で症例はわずかだが、発症すれば確実に進行し、やがて全盲となる病気だ。 |
【症状】 最初、暗くなると見えにくくなり、やがて日中でも見えなくなる |
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【原因とメカニズム】 遺伝性疾患により、網膜の光受容体(視細胞)が障害される |
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どのように病気が遺伝するのか 進行性網膜萎縮は、先に述べたように遺伝性疾患だが、同一個体の中に特定の「劣性遺伝子」が二つそろわないと発症しない(ほとんどの場合は劣性遺伝だが、すべてではない)。つまり、両親とも発症する犬なら子犬は100%発症するが、片親だけ発症し、もう一方の親犬がキャリア(特定の遺伝子を一つだけ持ち、発症しない)なら、子犬が発症する確率は50%(発症しない子犬はキャリア)。また、両親がともにキャリアで発症しなくても、子犬が発症する確率は25%で、キャリアの確率は50%。つまり、発症の有無にかかわらず、病気の遺伝子を持つ子犬が4頭に3頭の割合で生まれる計算になる。 どのように見えなくなるのか 光は、眼球の水晶体を通って、眼球の内側にある網膜に入る。網膜の外側の層には2種類の光受容体(視細胞)があり、その光の刺激を電気信号に変換して、内側にある何層かの細胞に伝達していく。網膜の一番内側(イラスト参照)には視神経の末端となる神経節細胞があり、そこから電気信号に変換された光の情報が視神経に集められ、脳細胞に伝達されて、脳細胞内で特定の色や形を持った物の姿が描かれる。 ところが、進行性網膜萎縮を発症すると、2種類の視細胞のうち、まず、光の「強弱」や「明暗」を感知する(明暗は細胞の種類の違いによって分かる)「桿状体」が障害を受けて細胞数が減っていく。これは、主に暗い場所で働く視細胞のため、夕方や夜に見えにくくなっていく。次いで、物の色や形を感知する(明るいところで働く)「錐状体」という視細胞が障害され、細胞数が減っていき、日中、物が見えなくなっていく。視細胞が障害され、光を電気信号に変換できなくなっていくと、その電気信号を送受する、網膜内の他の細胞群も果たすべき機能を失って死滅していき、網膜自体の厚みがどんどん薄くなっていくことになる。 |
【治療】 根治療法はなく、病気の進行を少しでも遅くする対症療法のみ |
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【予防】 病気の遺伝子を持つ犬を繁殖させない |
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*この記事は、2006年1月20日発行のものです。 | |
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