糖尿病2 |
【症状】 元気がない、いくら食べてもやせる、多飲多尿など |
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illustration:奈路道程 |
糖尿病といえば、中高年の人々の間でよく知られた病気だが、実は犬においても、特に六、七歳以上に多い老年性疾患の一つである。 |
【原因とメカニズム】 犬に多いのは、インスリン分泌機能が損なわれて発症する「インスリン依存性」 |
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なぜ犬は糖尿病になるのか。その重要ポイントが「インスリン」である。 では、インスリンとは何か。通常、食物から消化・吸収された糖分は、血液循環によって体じゅうの細胞に供給される(その一部は、肝臓でグリコーゲンとして蓄えられる)。もっとも糖分が各細胞に供給されても、それだけでは細胞内に入ることができない。すい臓(正確には、すい臓内に点在する「ランゲルハンス島」と呼ばれる組織にあるβ細胞)から分泌されたホルモン「インスリン」が糖分を各細胞内に押し入れる働きをしているのである。 ところが糖尿病の犬の場合、その多くが老齢化とともに、普段、体外から侵入する細菌やウイルスなどを退治する免疫システムに異常が起こり、インスリンを分泌するランゲルハンス島のβ細胞を破壊する「自己免疫疾患」になると考えられている。時には、すい炎などによって、インスリン分泌機能が損なわれることもある。 インスリンが分泌されなくなれば、体じゅうの細胞が糖分を活用することができず、血中に糖分がたまる一方になる。そして、過剰な糖分が血中から尿中に排出されていく。そうなれば、いくら食べても体がやせていき、脱水気味になって水をガブ飲みするという症状が現れてくるのである。このような、インスリン分泌機能が壊れることによって発症する糖尿病を「インスリン依存性」という。 一方、せっかくインスリンが分泌されているのに、一部のメス犬では、卵巣から出る黄体ホルモンなどの悪影響でインスリンの働きが低下する。それを補おうと、すい臓がインスリンを過剰に分泌するが、間に合わないために発症する「インスリン非依存性」の糖尿病もわずかながらある。
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【治療】 生涯、適量のインスリンを毎日、注射する |
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インスリン分泌能力の低下・欠如による「インスリン依存性」糖尿病の治療方法は、よく知られるように、毎日(朝夕二回か一回)適量のインスリンを生涯、注射し続けることである。そのためには、血中の糖分(血糖値)検査(十二時間絶食後)や尿中の糖分(尿糖)検査を行って、症状を把握し、必要なインスリン量を正確に算出しなければならない。 そして、毎日インスリン注射を継続しながら、愛犬の体調をチェックし、やせ過ぎなら特別の療法食などで体重、体調の回復を図ったり、適度の散歩をしたりしていけば、大過なく寿命をまっとうできる(肥満傾向の犬なら、獣医師の指導によって適切なダイエットを実施することが大切だ)。ただ、毎日インスリンを注射するためには、飼い主が動物病院でしっかり病状を学び、インスリン注射の方法を身につけることが不可欠だ(皮下注射のため、修得するのはそれほど難しくない)。 とにかく、いつも元気の有る無し、食欲の増減、体重の増減、飲水量の増減など体調の変化に気を配っていれば、万一、症状が悪化し始めても早めに対応することができる。一緒に暮らす飼い主の看護がきわめて大切だ。 |
【予防】 健康管理に注意し、早期発見・早期治療を! |
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先に述べたように、犬の糖尿病の多くが免疫システムの異常による「自己免疫疾患」によると考えられるため、有効な予防策はない。ただし、子犬の時から脂肪分の多い食べ物を控えるなどして、すい臓への負担を減らしていれば、慢性すい炎が原因の糖尿病を防ぐ手助けになるだろう。いずれにせよ、日ごろから健康管理に注意し、よく食べるのにやせ始めたり、尿の量や回数が多く、水をガブ飲みするなどの症状をみせ始めたりしたら、すぐに動物病院で検診してもらうことである。 |
*この記事は、2004年2月20日発行のものです。 | |
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